(2023.5.3更新)
こんにちは、halzoです。
Webサービスの利用規約って、ちゃんと読んでいますでしょうか?
- 利用規約なんて読む必要あるの?
- 長すぎて読んでる時間ないよ。。。
- いつも読まずに同意しているけど、なんだか不安。。。
という疑問や心配があるのではないでしょうか?
利用規約は、読む必要あります!
理由は、利用規約はユーザーと企業の間で結ばれる契約だからです。
とは言え、、、どう考えても
あの長い利用規約を全部読むのは非現実的
ですよね。
そこで、管理人が、これまでWebサービスを展開するIT系ベンチャー2社の法務責任者として、自社のWebサービスの利用規約を作成したり、他社のWebサービスを導入する際にその利用規約をレビューしてきた経験から、ユーザーとして把握すべき最低限のチェックポイントを整理しました。
ご自身が利用されているサービスについて、このポイントだけ確認すれば、安心して利用を続けられます。
結論(チェックしておくべき注意点)は、以下の4点です。時間のない方は、これだけ見ていただければとりあえず大丈夫です。
①アカウント停止(いわゆるBAN)される基準
②お金関係(受け取り・支払い・ポイントの有効期限)のルール
③退会・解約ルール
④著作権(使える・使われる)のルール
逆に、思い切って言ってしまうと、利用規約に書かれている上記以外の内容は、
- 実質的にユーザーに影響がないことが多い項目
- 企業の法務担当も、ユーザーと争う気がない項目(争うと大変なので、仮にクレームが来たら、わりと受け入れる)
というのが実情です。
※具体的なWebサービスを例にして、注意点を解説した記事もあります(すぐ読めます)。
もう1点付け加えると、
利用規約が更新されたら、大まかに「何が変更されたか」は確認する
ことも意識すると良いです。
お時間ある方は、以降で深ぼって説明していますので、ご覧ください。
利用規約とは?
利用規約は、これまで法律上で明確な位置づけがなかったのですが、2020年4月1日に改正施行された民法において、「定型約款」として下記のように明記されました。
定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。
改正民法548条の2第1項 より
上記改正より、企業側が利用規約を改訂するときのルールなどが定められたのですが、政府がこうした規制をすることになった背景には、利用規約が、実質的にユーザーと企業との間の権利・義務関係を規定した契約書として機能しており、その重要性が高まったからだと認識しています。
特に、昨今、普及が著しいWebサービスについては、サービスの利用条件等を、利用規約の形でユーザーに伝えるのが一般的なため、その重要性はさらに高まっています。
ですが、、、利用規約=契約書、という性質から、
- 言葉がわかりづらい(堅苦しい法律的な言葉が多い。。)
- とにかく長い
という問題があります。
最近は、下記の例(ゲーム「サイバーパンク2077」のユーザー同意書)のように、右側に要約文を付けた利用規約も出てきており、こんな例がもっと増えると良いなと思っています(自分はできていなかったので偉そうなことは言えないですがw)。
プライバシーポリシーとかは見なくていいのか?
Webサービスには、利用規約のほかにも、いくつか同意を求められる文書があります。
一般的に、Webサービスは以下のような構成で、ユーザーに文書を提示しています。
- 利用規約
- プライバシーポリシー ※「個人情報の取り扱いについて」という名称の場合もあります
- 特定商取引法に基づく表記
- 資金決済法に関する表示
プライバシーポリシーについて
「プライバシーポリシー」は、ユーザーから取得した個人情報をどのように扱うか、が規定された文書です。
企業によっては、コーポレートサイトに「プライバシーポリシー」を掲示し、サービスサイトには「個人情報の取り扱いについて」というサービス内容に特化したページを分けて掲示しているケースもあります。
ただ、個人的には「読まなくていい」と思っています。
理由は、そもそも個人情報保護法が年々厳しくなっているので、企業側が変な内容を記載していることはまず無い(そもそもできない)、からです(企業法務担当としては、作るのが大変な文書なので、読まれないのは正直、悲しいのですがw)。
ただし、ユーザーが入力した情報がWebサービス上で公開されるか否か、は確認したほうが良いです。
公開されないと思って入力した情報が、実は公開される情報だった(例えばニックネームを入れるべき所に本名を入れてしまった場合など)、ということがあります。
こうした点はプライバシーポリシーには説明されないので、Webサービスの使い方を説明しているページや、ご自身のユーザーアカウント画面の表示設定などで確かめるのが確実です。
特定商取引法と資金決済法について
「特定商取引法に基づく表記」は、通販事業をする場合に、事業者がユーザーに掲示しなければならない文書です。
「資金決済法に関する表示」は、プリペイド式の課金決済を導入する場合(法律上は、「前払式支払手段」と言います)に、事業者がユーザーに掲示しなければならない文書です。
これらも正直、「読まなくていい」文書です。
いずれも法律で記載事項が決められており、どのWebサービスもおおよそ同じ内容が記載されています。
特に、「資金決済法に関する表示」については、事業者が記載内容を財務局に届け出る必要があるので、不合理な内容を記載することができない文書になります。
また、重要な内容については、利用規約の記載事項と重複する部分が多いのも特徴です。
やはり重要なのは利用規約
利用規約が重要である理由は、Webサービス独自のルールが記載されるため、監督官庁のような他の誰かがチェックする機能が働きにくい文書だからです。そのため、自分自身の目でチェックしておくほかに、安心して使い続ける手段がないのです。
また、Webサービスによっては、本来、「資金決済法に関する表示」をしなければならないのに、法務担当者の理解が不十分で、財務局に必要な届け出をせず、この表示自体をしていないと思われるサービスもあります。つまり、「資金決済法に関する表示」の表示有無だけを見て、プリペイド式の支払いがあるかどうかを判断できないということです。
一方、利用規約が存在しないWebサービスというのは、まずありません。なぜなら、企業の法務担当者も、ユーザーに対する自社の権利・義務は明確にしておきたいからです(仮に、法務担当がサボろうとしても、サービス担当者から必ず「作ってくれ」と言われることになりますw)。
そういう観点からも、ユーザーとしては、利用規約の内容だけは把握しておく、というのが重要になります。
ただ、上記はあくまで限られた時間の中で最低限おさえるべき、という視点で書いていますので、もちろん、時間があれば全文書、目を通すに越したことはないです。
利用規約のチェックポイントは4つ
冒頭でも書いたとおり、チェックすべき4つのポイントについて解説します。
前提として、悪気がないのに「うっかり or 知らなくて、やってしまった」となりがちな項目に絞っています。
※一般的に「やってはいけない」ことが明らかで、悪意がある人にしか関係しない項目は、除外していますので、ご了承ください。
①アカウント停止(いわゆるBAN)される基準
意外と見落としがちですが、安心してWebサービスを使い続けたい場合、これは最も気をつけたほうが良いポイントです。
自社サービスを運営するIT系企業にいた経験上、企業の担当者は、この点については常に目を光らせて、積極的にアクションしてきます。
理由は、Webサービスの秩序が保たれず、逆にクレームが増加してしまうからです。
必ずしも法令違反につながる内容だけでなく、そのWebサービスの理念に反する行為が規定される場合があるので、一般論を述べることは難しく、個別にしっかり把握する必要があります。
②お金関係(受け取り・支払い・ポイントの有効期限)のルール
これはイメージしやすい内容だと思います。やはりお金の面で損はしたくないですからね。。。
❏お金を支払うタイプのサービスの場合は、
- 支払い金額の計算方法(都度購入、月契約、年契約での金額の違いなども確認)
- 支払い期限
- 支払い遅延時のペナルティ(遅延利息等)
- 事前に購入したポイントから支払う場合は、そのポイントの有効期限
- 返品・返金を受けられるルール
❏お金を受け取るタイプのサービスの場合は、
- 受け取り金額(売上金)の計算方法
- 入金される期限(売上発生後、何日以内に振り込まれるのか?、振込手数料は?、振込可能になる最低売上金額はあるか?など)
- 売上の取消ルール(サービスによっては売上発生後、審査により取消になる場合あり)
- 受け取り金額がポイント化される場合は、その失効期限
などを確認しておく必要があります。
また、クーポンや購入時にもらえるポイントは、使用期限がないか、確認しておきましょう。
③退会・解約ルール
Webサービスによっては、退会・解約時に必要な対応が定められているケースがあるので、確認が必要です(何か進行中の取引などがあると解約できない、など)。
また、何かを購入するWebサービスの場合は、支払いに関して以下の点は必ず確認しておきましょう。
- 年契約のとき、途中で解約した場合、違約金の支払いが発生するか?
- 発生する場合、翌年の契約を終了するには、いつまでに解約すればよいか?(○ヶ月前までに解約、などの規定を確認)
- 月契約のとき、毎月何日までに解約すれば、翌月以降の支払いが発生しないのか?
④著作権(使える・使われる)のルール
Webサービス上のコンテンツをユーザー側が使用する場合、コンテンツには著作権が発生するため、以下の点を確認しておく必要があります。
- 商用利用して問題ないか?
- 一切収益が発生しないプライベートでの使用なら問題ありませんが、直接・間接を問わず、結果的に広告収益が発生するブログやSNSなどへの利用は、全て商用利用にあたると考えたほうが良いです。
- 使用する際に、具体的なコピーライト表記の指示がないか?
- 加工して使用しても問題ないか?
- 利用者が勝手に改変することを防ぐ権利(翻案権や、著作者人格権に基づく同一性保持権など)があるため、確認が必要です。
コンテンツを投稿するタイプのWebサービスの場合には、逆にご自身の著作権が利用される可能性があるため、以下の点を確認しておきましょう。
- 投稿コンテンツが、投稿した場所以外にも掲載・公表される可能性がないか?ある場合は、どこに掲載・公表されるのか?
- 一般的には、販促目的で広告などに利用されるケースが多いと思います。
- クローズドな場に投稿しているつもりが、いつの間にか公開されていた、という事もあり得るので、しっかり確認しておきましょう。
- 投稿コンテンツの著作権を、企業側に譲渡しなければならない、と書かれているか?
- 譲渡に同意した場合は、前述の掲載・公表の範囲を明示していなくても、企業側が自由に利用できることになります。
利用規約において、読まなくてもいい条項
利用規約には、上記の点以外にも様々な条項がありますが、ボリュームも多いので、正直、読まなくても良い(もちろん読むに越したことはないですが)と考えています。
理由は、大きく2つあります。
基本、企業はユーザーと争いたくないから
冒頭にも書きましたが、前述の4つのチェックポイント以外については、企業側はユーザーと争う気がないためです。
例えば、利用規約には、ユーザーが企業側に損害を与えた場合、ユーザーに損害を賠償させる条項(損害賠償条項)があるのが一般的です。
ただ、ユーザーが1企業に大損害を与えることは、よほどのことが無い限りあり得ません。また、多少の損害で企業が動くことはないです。訴訟になったら、とんでもないコストと時間がかかるためです。
少なくとも法務担当は、そんなこと、忙しくてやっていられませんw
ユーザーが気にしても仕方がない内容だから
利用規約には、「このサービスが突然停止しても責任は負いません」という免責条項が書かれることが多いですが、これにユーザーが目くじらを立てても仕方がありません。
Webサービスである以上、システム障害はつきものであり(程度問題ではありますが)、企業に障害ゼロを保証させることは現実的ではありません。「Webサービスはそういうものだ」と考えて、うまく付き合う方が生産的でしょう。
とはいえ、実際にシステム障害などで、ユーザーに大きな損害をもたらした場合、利用規約に「企業は責任を負わない」と書いてあったとしても、結局、企業は何らかの対応をします。
ソーシャルゲームでシステム障害があると、課金アイテムを補償として配っているのがその例です。
結局、不評を招いて顧客離れが生じることが、企業にとって最も大きな損失だからです。
その他にも、
- ユーザーが反社会的勢力でないこと
- ユーザーの責任で、アカウント情報(IDとパスワード)を管理すること
- ネット環境や端末環境は、ユーザー自身で用意すること
- 訴訟になったときにどの国の法律に基づいて裁判をするか(準拠法)
- 訴訟になったときの裁判所はどこか(裁判管轄)
などの条項がありますが、どれも当たり前の話ばかりなので、正直、読む必要はないです。
利用規約の更新通知は必ずチェック
利用規約の重要なチェックポイントは以上のとおりですが、最後にもう1つ、
利用規約が変更されたら、必ず確認する
という点は、心がけると良いです。
理由は、前述した4つのポイントが、気づかないうちに変更されていた場合、大きな問題になり得るからです。
せっかく利用開始前にチェックしても、無駄になってしまいます。。
利用規約が更新されると、お知らせメールが来たり、Web・アプリ内のお知らせ部分に必ず通知されるはずなので、「利用規約更新のお知らせ」のような通知を見つけたら、少々面倒でも、目を通しておくことをお勧めします。
親切なサービスの場合、変更点の概略が書かれているので、少なくとも、前述した4つのポイントに関連する変更かどうかは、チェックしたほうが良いでしょう。
簡単にチェックする方法
お知らせの文面内に、変更点の概略説明がない場合は、念のため最新の利用規約を再確認し、前述の4つのポイントが、不都合な内容に変わっていないか、チェックしたいところです。
こうした場合に備え、あらかじめサービスの利用開始時に確認した利用規約を、テキストデータでコピーして保存しておくと便利です。
こうすることで、更新があった際、diffツール(文書比較ツール)を使うことで、更新前の利用規約と、更新後の利用規約の相違点を、明確かつ迅速に把握できます。
diffツールには様々なものがありますが、Microsoft Office 365のWordや、Googleドキュメントの文書比較機能が代表的なツールです。
また、Web上で利用できるツールとしては、下記のようなサイトがあります(こちらのサイトの比較結果がとてもわかり易く、いつも愛用させていただいています)。
利用規約をテキストデータで保存できない場合
アプリ内に表示される利用規約などは、スクロールしづらかったり、そもそもテキスト抽出が不可になっていたりして、テキストデータで保存できない場合があります。
また、Webサービスでは稀かもしれませんが、契約条件に個別のカスタマイズが入る場合など、サービスによっては書面で利用規約が提示される場合もあり得ます。
そうした場合には、OCR機能や専門サービスを使って、テキストデータ化しておくことをお勧めします。
OCR機能アプリを使う
手前味噌ではありますが、私が自分で、スマホで撮影した画像や、スマホ内にある画面キャプチャ等を、OCR機能を使って簡単にテキストデータ化できるアプリを開発したので、よろしければお試しください。
件数無制限、完全無料でご利用いただけます。
専門サービスに依頼する
ビジネス目的での利用では、精度の高いテキストデータで保存したい場合もあると思うので、下記のようなテキスト化専門サービスをご利用されるのも一案です。
2023年5月時点では、1文字0.5円〜で、精度高くテキストデータ化してもらえます(テキストファイルの他、WrodやExcelの形式でも納品可能になっています)。
有料のため、個人では利用しにくい面があるかもしれませんが、ビジネス用途で利用し、かつ利用規約が書面でしか手に入らない場合には、将来的なリスク低減の観点から、正確なテキストデータとして保存しておく意義はあるかと思います。
まとめ
改めて、Webサービスの利用規約でおさえておくべきチェックポイントは以下の4つです。
①アカウント停止(いわゆるBAN)される基準
②お金関係(受け取り・支払い・ポイントの有効期限)のルール
③退会・解約ルール
④著作権(使える・使われる)のルール
また、利用規約の更新通知があったら、上記4つのポイントに変更が無いかチェックしておきましょう。
企業としては、ユーザーに対して、網羅的に自社の権利と義務を示す必要があるので、結果的に利用規約のボリュームが膨大になってしまいます。
しかし、その大半が、実際には読んでも仕方がない項目であり、そのせいで本来、チェックすべきポイントが埋もれてしまい、結果、多くのユーザーが利用規約を読まずにWebサービスを利用しているのは、非常に残念なことです。
転ばぬ先の杖!ということで、是非、利用規約の4つのポイントをしっかり押さえて、安心してWebサービスを楽しみましょう。
なお、以下に、具体的なWebサービスを例にして、注意点を解説した記事もありますので、よろしければご覧ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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